軒ゼロ住宅の注意点

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軒ゼロ住宅の注意点

2021年1月26日(火曜日) テーマ:★建築情報をみる・屋根、外壁

  最近の住宅に、次の写真のような軒のない建物が増えてきました。日本古来の軒のある住宅に比べシンプルな外観になり、外壁材のデザインにもマッチするので多くの方に好まれているのかもしれません。しかし、いわゆる「軒ゼロ住宅」は、施主の要望に関わらずハウスメーカーや工務店が推奨している例が多いようです。

軒ゼロ事例1w250.jpg 軒ゼロ事例2w280.jpg

軒ゼロ事例w600.jpg

  では「軒ゼロ住宅」にはどんなメリットがあるのでしょうか? 例えば、次の様な一般的な2階建ての住宅(1階面積20坪、2階面積12坪、合計32坪)を考えてみましょう。軒の出寸法を約90cm、屋根勾配を5/10とすると、屋根面積は合計38.6坪(1階16.2坪、2階22.4坪)になります。つまり32坪の建物に加え、6.6坪分の軒が必要になるわけです。2階部分だけ注目すると分かるとおり、もし12坪の平家建てなら10.4坪の軒が必要になります。これを無しにすると、床面積はそのままでトータルコストが安くなる・・・こんないい話はありません。「軒ゼロ住宅」のメリットは、デザインだけではないのです。

屋根面積600.jpg

  では「軒ゼロ住宅」のデメリットは何でしょうか? 本来、日本の住宅は、寿命を長くするため、軒の出を大きくして土壁や漆喰壁を風雨から守ってきました。ところが、耐久性の良い建材が開発されると軒の出を小さくするようになり、今では「軒ゼロ住宅」も普通になったというわけです。
  しかし、外壁が風雨にさらされる以上、問題がないわけではありません。例えば、冒頭の写真のように、外壁の入隅に取りつく開口部や、外壁を貫通する設備機器等があるため、軒の無い場合は漏水の危険度が高まります。多くの場合は、隙間をコーキングして防水しますが、コーキングは外壁材に比べ寿命がずっと短いのです。日経アーキテクチュア2021-1-14に「知らなかった軒ゼロの危うさ」が掲載されましたが、外壁下端の水切りが防水紙の外側に取りつけられるなどの間違いはあってはなりません。(正しい取付方法は下図のとおり)
水切りの納まりw300.jpg
  このように、「軒ゼロ住宅」では雨漏りのリスクを伴うので、施主によく説明するとともに、漏水の可能性を無くす努力が設計と施工の両面で必ず必要になります。

(文献:日経アーキテクチュア2021-1-14)

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