積雪荷重の割り増しは大丈夫?|国交省告示第80号関連

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積雪荷重の割り増しは大丈夫?|国交省告示第80号関連

2018年3月 2日(金曜日) テーマ:★建築情報をみる・積雪

   緩勾配の大きな屋根を持つ建物については、積雪荷重に対して積雪後の降雨を考慮した割り増しによる構造計算が告示で義務付けられることになりました。(H31年1月15日施行)

   対象となるのは、次のいずれにも該当する屋根の部分(特定緩勾配屋根部分という)を持つ建物です。

   1)棟から軒先までの水平距離が10m以上

   2)屋根勾配が15度(≒2.7/10)以下

   但し、積雪量が15cm以上100㎝未満の地域を対象としており、屋根版がRC造やSRC造の場合は除かれます。

   例えば、勾配が2度以下で水平距離が25mの緩勾配屋根について、この告示に示された方法で積雪荷重を計算すると、次のグラフのようになります。

(積雪量が1m未満の積雪1㎝当たりの単位重量は20N/㎡として計算)

積雪荷重の割り増し1200.jpg

   これによると、この規準は、積雪量の少ない地域に対して科された割り増しであることがわかります。積雪量が大きい地域より小さい地域の方が割り増し率が大きいのです。(例えば、屋根の水平長さが10mの場合を計算すると、積雪量60㎝以上の割り増しはなくなります。)

   しかし、積雪荷重の割り増しはこれで十分でしょうか。気になるのは、積雪量が1mに近づくほど割り増しが不要になり、1mに達すると(単位重量を30N/㎡とするため)積雪荷重が急に大きくなることです。これは現実的ではありません。実際には、積雪量の変化に対する積雪荷重の値は連続的に変化するはずです。例えば積雪量1mで3,000N/㎡が妥当なら、95㎝で1,900N/㎡と急に軽いはずはないでしょう。

   これに着目すると、告示で示された積雪荷重の割り増しよりも、この差を解消するための割り増しの方がずっと大きい。北東北には、積雪量が1m未満であっても、気温が低く根雪になってしまう地域がたくさんあります。その結果、梁に予想以上のたわみが発生することもしばしばあります。

   この対策として、弊社では、積雪量が1m未満であっても、雪の単位重量はなるべく30N/㎡で計算するようにしています。そうすることにより、全ての屋根形状でこの告示もクリアできます。法で決められた単位重量は最低基準であり、設計者に最低値の設計を課されたわけではありませんからね。



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